2019.1.24
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人事評価

海外での労使紛争を未然に防ぐための7つのポイント

(写真=fizkes/Shutterstock.com)
(写真=fizkes/Shutterstock.com)
日本企業の海外進出が増えるとともに、現地での労使紛争の事例も時折マスメディアなどで報じられるようになってきました。日本の価値観と現地の価値観にズレが存在したり、現地経営者が労働者の不満に対応しきれなかったりと、その要因はさまざまです。

海外での労使紛争は日本のみならずグローバルに報じられることもあり、企業のイメージを大きく損ねる可能性があります。今回は、海外での労使紛争の現状と要因、防止するためのポイントについて整理します。

グローバルにおける労使紛争の現状

日本企業の海外進出が増えるとともに、海外(特にアジア圏)における労使紛争の事例もまた増加傾向にあると考えられます。日系企業に関連した労使紛争の件数をまとめた正確な統計は存在しませんが、近年になってこうした労使紛争がニュースになるケースが存在します。

たとえば、日本の自動車メーカーのインド子会社では、2012年に暴動が発生し人事部長が死亡する事態にまで発展しています。多くの実務関係者や研究者が日系企業をめぐる労使紛争の多さ、そして一度紛争が発生すると数ヵ月単位で長期化する傾向にあることを指摘しています。

日系企業および現地サイドの双方から見た労使紛争の発生要因や、特徴には主に以下のような点があります。

・紛争発生は現地の日本人経営者にとってマイナス評価の要因となるため、本社に秘匿しようとする傾向がある
・現地日本人経営者には争議に対処した経験がなく、いざというときの対処方法が分からない
・現地の責任者に任せようとしても、世代差もあって現地労働組合の若いリーダーとの対話がうまくいかないケースが多い
・日本本社が現地任せにしてしまい、紛争発生を知ったときには収拾が困難なほど紛糾しているケースが多い
・現地労働組合のリーダーも経験不足で、派手で目立ちやすい行動に駆られる傾向にある

社会経済的な要因も指摘されています。特に、1990年代以降の中国や東・東南アジア諸国の飛躍的な経済発展が大きな要因です。経済発展によって現地労働者の賃金や労働条件が向上したことは、企業からすると労働コストの上昇を意味します。そのため事業の縮小や撤退、生産拠点の見直しなどの動きが増え、結果として労使関係の緊張関係が高まったというのです。

また、国内の労働組合と現地労働組合の連携が乏しいことも指摘されています。「労使一体」という言葉もあるとおり、長く日本の労働組合は会社側の立場を擁護することが多かったとされています。そのため、海外で労使紛争が起こっても現地の労働組合より現地の生産状況を気にかける傾向にありました。

以上のように、海外進出事例が増えている一方で、現地労働者をどう管理するのか、労使紛争を防ぐためには何をすべきか整備しきれていない日本企業も多いことが推察されます。

SNSで拡散されてブランドイメージを損なうリスク

労使紛争状態における労働者の具体的な争議行為としては、ストライキやサボタージュ(怠業)、ピケッティング(スト破りの就労阻止や他の労働者へのスト参加促進)などが挙げられます。いずれも労働者による労働力提供の放棄であり、企業にとっては生産性が大きく低下して経営状況に多大な影響を及ぼしかねません。マスメディアやSNSなどで事態が拡散される可能性もあり、企業のブランドイメージを損ねるリスクもあります。これは国内で発生する労使紛争でも、海外の日系企業で発生する労使紛争でも同じことです。

海外で発生する労使紛争で特筆すべき点としては、世界のNGOや消費者などから非難を浴び、場合によっては海外市場から排除される可能性があることです。この背景には、労使関係の枠組みのグローバル化があります。世界的に企業のグローバル化が進行したことで、1990年代以降にグローバルな規模で労働者を保護する枠組み作りも進行したのです。

たとえば、1998年に国際労働機関(ILO)が「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言とそのフォローアップ」を採択し、結社の自由と団体交渉権、強制労働の禁止など多国籍企業を規制するルールが定められました。

以上を踏まえると、海外における労使紛争の発生や対応の失敗は、現地や日本のみならず世界中に報道・拡散されるリスクがあるため、グローバルレベルでブランドイメージを傷つける可能性があります。

労使紛争を未然に防ぐための7つのポイントとは?

過去に発生した海外の労使紛争の事例を踏まえて、未然に防止するためのポイントが各種機関から提言されています。これらの提言をまとめると、会社側としては現地経営者や駐在員・出向者に対する働きかけ、そして労働者および労働環境に対する働きかけの両面があります。

現地経営者や駐在員・出向者に対しては、本社とのコミュニケーションを欠かさないことが求められます。たとえば、以下の対応が考えられます。
  • 派遣前に人事労務の知識や現地の労働事情について研修を行う
  • 現地経営者が現地の担当者や弁護士などに人事労務を任せきりにしていないか、紛争の種がないかなど、本社が現地事情を継続的にモニタリングする
労働者や労働環境に対する働きかけとしては、以下のように採用・評価・環境作りなどにバランス良く配慮する必要があります。
  • 労働組合や従業員に対し、法外な要求をしないよう日頃から経営情報を共有する
  • 出身地や属性など、特定の集団に属する労働者を偏って採用しないよう配慮する
  • 不満が出にくいように、人事評価の際は客観的で公正な基準を用いて明確な説明を行う
  • 不正行為や禁止行為について、具体的な内容を就業規則に盛り込む
  • 現地の価値観をあらかじめ調査したうえで、内情に即した評価方針や福利厚生の制度を構築する
以上の7つのポイントを考慮し、本社と現地のコミュニケーションを維持しつつ、現地労働者の価値観や文化を尊重する形で処遇することが望ましいと考えられます。

現地とのコミュニケーション強化とフェアな評価が重要

企業がグローバル市場へ進出する以上、ローカル人材をめぐる処遇の問題や文化・価値観の違いに起因する諸課題を見過ごすわけにはいきません。現地の文化・価値観をあらかじめ調査するとともに、現地拠点の日本人責任者と本社がコミュニケーションをとって課題が顕在化しないうちに対処することが求められます。

また、現地スタッフを評価する際にはわかりやすい基準によってフェアに評価することが、従業員の不満をためない重要なポイントになり得るでしょう。そうした適正な評価は労使紛争の抑止効果にとどまらず、生産性の向上や業務効率化にもつながり、ひいては業績向上にも寄与することになるでしょう。
 

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