2018.11.21
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人材マネジメント

中国ではより戦略的なタレントマネジメントが必要な3つの理由

(写真=rubikphoto/Shutterstock.com)
(写真=rubikphoto/Shutterstock.com)
2015年にはサントリーやカルビー、パナソニック、2017年には神戸製鋼所に積水化学工業、JCRファーマと中国から撤退してしまう日系企業は少なくありません。その原因の一つになっているのが人材確保の難しさです。

この問題を解決するための方策として挙げられるのが、自社の戦略に基づいた人材マネジメントである「タレントマネジメント」です。ここではなぜこのマネジメント手法が中国進出において有効なのかを、3つの理由に基づいて解説します。

日系企業は人を育てないため中国では人気がない

少し古いデータですが、スウェーデンの大手市場調査会社「ユニバーサム」がアジア各国の学生を対象に行った「理想的な企業(2011年版)」によれば、100位以内にランクインした日系企業は1、2社で、上位50位以内になるとゼロという結果が出ています。この結果は就職したい企業ランキングとも言え、その後の日系企業の度重なる撤退劇を考慮に入れると、日系企業の人気はさらに下がっている可能性もあります。

原因の一つとして「日系企業は人を育てない」というものが挙げられます。欧米企業の多くは、人材を自社に定着させておくために幹部クラスの従業員には、多くの研修費用をかけています。例えば本社に研修に行かせたり、情報管理のトレーニングを受けさせます。

これに対して、日系企業はいまだに日本的な年功序列の考え方を中国に持ち込んでいるだけの企業が多いのが現状です。これでは優秀な人材が流出するのも自然な流れと言えるでしょう。

このような差を埋めるために、「欲しい人材」を定義づけ、その定義に基づいたキャリア開発や人材流出防止のための施策(リテンション)を行う必要があるのです。

中国人は「職務内容」「評価基準」の明確性を重視するため

職務内容=何をするべきかが曖昧になれば、評価基準=どんな成果を残せば評価されるのかも曖昧になります。中国人は日本人に比べて縦割り意識が強く、自分の仕事と他人の仕事をきっちり分けて考える人が多いと言われています。

そのため職務内容が曖昧になると、いったい自分が何をすればいいのか、どんな成果を残せば評価されるのかがわからず、結果、中国人から見て日系企業は働きにくい職場になりがちなのです。

しかし、日系企業では、自分の仕事が終わっても、他の社員が残業をしているなら一緒に残って手伝うべきという考え方が未だにあり、個人の職務内容が曖昧になっているケースは珍しくありません。「阿吽の呼吸」「空気を読む」などの文化も、職務内容の曖昧化に一役買っているでしょう。

タレントマネジメントの考え方は、どのポジションの人材が自社の競争優位性を確立するために必要なのか、どのような行動が自社に貢献する行動として評価できるのかといった観点から、職務内容や評価基準を明確化します。そのため日系企業にはタレントマネジメントが必要なのです。

日系企業が中国人の上昇志向に応えることができないため

「Science Portal China」のコラムで、富士通総研経済研究所の主席研究員である柯隆氏は「中国社会では、弱者は救われるのではなく切り捨てられる運命にあるという暗黙のルールがある。そして切り捨てられないために、中国人は上昇志向を持つのだ。」と書いています。

しかし日系企業のように職務内容や評価基準が曖昧な組織では、どうすれば出世できるのかがわからず、中国人に元来備わっている上昇志向に応えることができません。この問題を解決するのがタレントマネジメントです。

タレントマネジメントは、「どんな人材に価値があるか」「どんな行動を評価するか」「そうした人材を開発・確保するためには何が必要か」などを明確にする手法で、そのためには何をすれば成長でき、出世できるのかが明確になります。

このようにタレントマネジメントは中国人労働者の特徴である上昇志向と相性が良いのです。この点においても、中国での人材確保に悩む日系企業がタレントマネジメントを実践するべきだと言えるでしょう。

日本的な人材マネジメントから脱却しよう

日本的な人材マネジメントが、中国で通用しないことはすでに多くの日系企業が証明しています。このような状況を打破し、中国での人材確保を成功させるためには、日本的な人材マネジメントから脱却し、新たな手法を導入する必要があります。タレントマネジメントは有力な選択肢になると言えるでしょう。
 

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