2018.12.21
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20年弱で中国最大企業に上り詰めたアリババの組織経営とは

(写真=shutteratakan/Shutterstock.com)
(写真=shutteratakan/Shutterstock.com)
設立からわずか20年足らずで、グループ子会社も含め3万人を超える従業員を抱える世界最大級のeコマース企業へと成長を遂げたアリババグループ(阿里巴巴集団)。急速な成長を支える独自の組織経営のカギとなるのは、企業理念の浸透と優秀な人材の育成です。

6つのコアバリュー「六脈神剣」とは?

アリババは「六脈神剣」と呼ばれる6つのコアバリューを企業理念としています。「顧客第一主義」「チームワーク」「変化への適応性」「誠実性」「情熱」「コミットメント」から成り立っており、アリババの経営および人材の雇用・評価・補償の基盤となっています。「六脈神剣」という名称は、中国の小説家、金庸の作品「天龍八部」を由来としています。
人材評価においては「六脈神剣」が2割を占め、30に細分化した行動特性から、社員の具体的な行動や思考が企業理念に見合ったものかどうかという点を重視します。

アリババの人事部は人材採用の補助だけではなく、各事業部の業務遂行から事業戦略の軌道修正まで、幅広い戦略推進をリードする役割を担っています。企業理念の浸透支援もそのひとつです。社員一人ひとりにアリババの価値観を理解、共感させることで、揺るがない組織を構築しています。

361制度は「文化」として定着

最終的な評価はコアバリュー評価と業績評価に基づき、ABCの3段階で構成されています。A評価を受ける社員の割合は3割、B評価は6割、C評価は1割であるため、「361制度」と呼ばれています。

A評価は昇進・昇格、C評価を2回受けると解雇というシビアな評価システムがアリババの組織文化として定着している背景には、人事部と各事業部による共通の価値観や徹底した連帯感、情報共有のパイプラインなどがあるものと思われます。

社内チャットで自由にやりとりできる仕組みもあるため、社員或いは部署間でコミュニケーションがとりやすい環境が整っている点もプラス要素でしょう。また経営陣も含むすべての従業員が討論できる電子掲示板を導入し、社員の要望や課題に耳を傾けることで、些細な問題にも迅速に対応しています。

次世代幹部社員の育成や達摩院などへの投資によるエンジニアの育成

次世代幹部社員の発掘や育成は多くの企業が抱える重要課題です。どれほど秀でたトップが組織を守っていても、世代交代の時期は必ず訪れます。

アリババは重慶大学や重慶工程職業技術学院を含む教育機関と提携するなど優秀な人材の卵の発掘に力を入れているほか、2016年には国外から人材を誘致し、アリババの本社で16カ月にわたり育成するプログラム「アリババ・グローバル・リーダーシップ・アカデミー(AGLA)」を提供しています。

2017年には人類の未来のための研究施設「達摩院」の設立に、今後3年間で1000億元を投じると発表しました。少林武術の修行所を名の由来とする達摩院では、ワシントン・北京・モスクワ・シンガポールなどにラボを設け、人工知能(AI)や量子コンピューターといった分野で世界トップクラスの人材を投入するそうです。

未来の問題を解決するための研究が進められると同時に、優秀なエンジニアが続々と生まれると期待されています。

世代交代が迫るアリババ

アリババは徹底した組織経営に徹する傍ら、数年前から着実に世代交代を進めています。2018年9月にはアリババ帝国を一代で築き上げたジャック・マー(馬雲)氏が突然の引退を発表し、世間を驚かせました。後任は2015年にCOOからCEOに昇格したダニエル・チャン(张勇)氏です。

引退の理由について様々な憶測が流れましたが、マー氏自ら今回の世代交代は10年前から計画されていたものだと語っています。

「優秀な人材の育成に向け、独自の文化と仕組みに基づいたガバナンス体制を構築することが、自分の引退後もアリババの継続的な成長を実現する唯一の手段である」との結論に至って以来、後継者育成に全力を注いできました。企業が成し得た発展を次世代に伝承する上で非常に有効なこの体制は、今後も末永く引き継がれていくでしょう。

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