2019.2.14
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国別トレンド

「ビジネスに国境はない」鴻海から学ぶ真のグローバル化

(写真=Impact Photography/Shutterstock.com)
(写真=Impact Photography/Shutterstock.com)
設立からわずか40年間余りで、台湾の小さな町工場から売上高4兆7074億台湾ドル(約17兆円)という、世界最大規模の電子機器受託生産企業(EMS)に成長を遂げた鴻海(ホンハイ)精密工業。

世界で100万人の従業員を抱える「鴻海帝国」を一代で築き上げた郭台銘(テリー・ゴウ)会長は、「ビジネスに国境は存在しない」というグローバルな視点の持ち主です。

「鴻海帝国」の経営方針

鴻海の経営方針の中核をなすのは、過去の経験や直観に基づく「即決即断」と粘り強い交渉力です。統制力に長けた有能な人材が意思決定を下す中間管理職をかためており、トップが絶対的な権力を握っています。

また、顧客からの厳しい注文に忠実に応え、ハードルを越えるごとにさらなる高みを目指す無限の向上心により、AppleやGoogle、Microsoft、SONY、任天堂といった大手グローバル企業から次々と受注契約を獲得しました。顧客の需要を満たす製品を供給することで、「中国は世界の工場」という定評を勝ち得ました。

鴻海が定義する本当のグローバル化

郭台銘会長はシャープ買収の際、企業文化の違いを懸念する声に対し、「そうした違いこそが成長の糧になり、両社をさらなる高みへと押し上げる」と説きました。

時代の変化とともにビジネスからは国境が消え、グローバルに事業を展開する企業のみが成長を維持できる――郭会長の定義する真のグローバル化とは「現地化」を意味し、「現地における育成を含む人材確保と管理に注力することで、持続的な成功を期待できる」との見解に基づくものです。

現地化の失敗例として、「組織構造が現地化されていない」という落とし穴が挙げられます。現地の人材を採用しても、経営戦略や人事は駐在員が権限を握っているといったパターンです。

鴻海は台湾や中国における成功から考案した「利益法則」をグローバル戦略の主軸とし、海外工場では従業員を現地採用。研修を通して自社の経営理念を徹底的に教え込み、各国の文化や特徴を活かした現地化を目指しています。

シャープの人事システム見直しの基盤にもなった考え方とは?

2016年、新生シャープに就任した戴正呉社長が、再建策の一環として導入した「信賞必罰」に基づいた賞与改革を実施しました。功績をあげた社員には報酬を与える賞与改革で、年齢や経験を問わず、優良人材の活躍を後押しすることを目的としています。

2017年度の賞与は功績に応じて、1~8ヵ月分の賞与が支給されました。目覚ましい功績をあげた社員には「社長特別賞」として、驚くほどの金額が支給されたと戴社長は述べています。

新改革に伴い、「役割等級制度」も導入されました。これは各社員の役割の重要度に応じて等級を設け、社員を格付けする制度です。同一役割・同一賃金がベースであるため、全社員が功績に見合った報酬を得られるという利点があります。

こうした制度から、リーダーシップとガバナンスを重視する鴻海の姿勢がうかがわれます。年功序列型人事が定着している日本では、非常に合理的ながらも冷淡な制度と受けとめられるかもしれません。しかし戴社長は、旧シャープ没落の原因を「ガバナンスの欠落」と見なしています。

従業員への待遇から見る組織力強化策とは

社員のパフォーマンスをシビアに評価する一方で、手厚い福利厚生を工場員を含むすべての労働者に提供しています。特に工場における勤務時間の長さや労働環境の過酷さが批難を受けていますが、宿舎や食堂も完備されており、毎回の求人には数千人もの応募者が殺到するそうです。また、問題視されている中国の工場の労働環境改善に乗りだしています。

従業員の満足度は、個人や組織の生産性や業績に大きく影響します。従業員がやり甲斐を感じ、生き生きと仕事に打ち込める職場環境を提供することで、会社への忠誠心や優良社員の定着率も向上し、長期的な組織力強化につながるわけです。

日本では「シャープが鴻海の経営戦略でどのように生まれ変わるか」という点が注目されていますが、鴻海が目指す先は、国境にとらわれない真のグローバル・カンパニーとしての成長です。
 

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